ガス給湯器にも寿命があります。徐々に調子が悪くなっていく場合もあれば、ある日突然動かなくなる場合もあり、交換する時期も各世帯でバラバラです。
この記事をご覧になっている方の中には
「ガス給湯器の寿命年数は本当に10年なのか?」
「30年使える可能性はないのか?」
「調子が悪いまま使い続けて大丈夫なのか?」
などが気になっている方も多いのではないでしょうか。
結論からお伝えすると、ガス給湯器の寿命(交換時期の目安)は約10年といわれています。その中で15年、20年と使われている方も少なくありませんが、正常な状態で30年近くも動き続ける可能性はほとんどないと考えるべきでしょう。
そこで今回は、ガス給湯器を20~30年と長く使い続ける5つのデメリット、少しでも長く使うための2つのコツ、知っておきたい寿命の前兆について詳しく解説していきます。
この記事を読むことで、給湯器の交換時期を判断しやすくなり、交換後も長持ちさせることができるでしょう。
目次
ガス給湯器の寿命年数は約10年が一般的
ガス給湯器の寿命年数は「8~10年」「10~15年」など、WEBサイトによって書かれている年数は異なります。その理由は「給湯器の寿命年数」という明確な定義がないからです。
そのためWEBサイトの情報は「交換時期の目安」として紹介されていると考えておきましょう。
しかし、その中で「10年」という年数には統一された2つの指標が存在します。
- 設計上の標準使用期間が10年
- 補修用性能部品の保有期間が10年
それでは順番に詳しく解説していきます。
1.設計上の標準使用期間
ガス給湯器には「設計上の標準使用期間」があり、家庭用の屋外式ガス給湯器であれば10年と決まっています。(屋内式は「設計標準使用期間」と呼ばれ、同じく10年)
参照:リンナイ|設計標準使用期間について
これは、国やメーカーで統一されている指標になります。
「設計上の標準使用期間(設計標準使用期間)」をもう少しわかりやすく表現すると、「安全上支障なく使用できる期間」になります。その期間を過ぎると、部品の経年劣化が進み、故障や事故が発生する可能性が高くなるのです。
つまり、公式的な「給湯器の交換時期の目安」と判断することができます。
2.部品供給の問題
ガス給湯器の部品においても「補修用性能部品(修理用の部品)の保有期間」という統一指標があります。BL認定品の給湯器であれば10年、それ以外の機種は7年と決まっています。
BL認定品の給湯器とは
一般財団法人ベターリビングによって優良住宅部品(品質、性能、アフターサービス等に優れた住宅部品)の認定を受けた給湯器です。商品の保証期間は、一般品は1年、BL認定品が2年となっており、部品の保有期間もそれぞれ異なります。
参照:一般財団法人ベターリビング|BL部品とは
つまり、使用期間が10年(BL認定品以外は7年)を経過すると、機種によっては修理するための部品が供給できなくなり、給湯器はその時点で寿命を迎えることになります。
10年以上使い続けるということは、ある日突然給湯器が故障しても修理ができず、無計画な商品交換を余儀なくされるリスクを抱えることになります。
ガス給湯器を20~30年使い続けることの5つのデメリット
ガス給湯器は使用年数が10年を超えると様々なリスクやデメリットが増えてきます。
そして仮に20年や30年の間、給湯器が動き続けたとしても次の項目は切り離すことができません。
- 不調によるメンテナンス費用がかかる
- 部品の経年劣化によりガス代が高くなる
- 急にお湯が出なくなるリスクが高くなる
- 急な故障で価格交渉する余裕がなくなる
- 事故が発生するリスクが高くなる
それでは順番に詳しく解説していきます。
1、不調によるメンテナンス費用がかかる
国やメーカーは約10年で点検や交換を推奨しており、一部機種では法的な点検が定められています。しかし、多くの場合は強制力がなく任意であるため、点検を受けずに10年以上使われているケースは多々あります。
安全に使用するためには定期的な点検を受けることが望ましいとされており、結果的に点検費用がのしかかってきます。
2、部品の経年劣化によりガス代が高くなる
ガス給湯器は様々な部品で構成されています。例えばお湯をつくる熱交換器であれば10年相当の耐久性が確認されていますが、使用期間に伴って劣化は着実に進みます。故障しない限りは機能し続けますが、やがて本来の性能を発揮できなくなります。
使用期間が10年を超えると経年劣化が加速するといわれており、同じガス量でも効率が低下し、気づかぬうちにガス代が高くなっていくというリスクを抱えることになります。
3、急にお湯が出なくなるリスクが高くなる
ガス給湯器の経年劣化のスピードは使用環境や使用頻度で大きく異なり、壊れ方も様々です。「お湯の温度が安定しない」「異音がする」など、調子が次第に悪くなって壊れることもあれば、エラーや前兆もなく突然壊れることもあります。
特に10年を超えると「昨日まで使えていたのに今朝突然壊れた」というパターンは決して珍しくありません。
4、急な故障で価格交渉する余裕がなくなる
ガス給湯器がある日突然壊れると、当然のようにお湯が出なくなります。寒い冬場であれば緊急事態といえるでしょう。10年以上使用するということは、この緊急事態に直面するリスクが高くなるということです。
修理を検討しても「補修用性能部品」がないかもしれません。交換を検討しても無計画のため、商品選びや業者選び、見積り金額の交渉をしている余裕もないことでしょう。
さらに選んだ機種が受注生産品であれば、工事完了まで1週間以上かかる場合もあります。販売業者によっては工事日まで仮設置でお湯を使えるようにしてくれますが、2回工事が必要になるため、当然費用はかさみます。
費用を抑えるために我慢する選択もありますが、その期間はお湯なし生活を余儀なくされます。「もったいないから長く使う」「壊れてから買い替えを検討する」ことは、緊急事態のリスクを高め、結果的に高額な交換費用につながる事例があることも知っておくべきでしょう。
5、事故が発生するリスクが高くなる
繰り返しになりますが、ガス給湯器を「安全上支障なく使用できる期間」は10年です。「給湯器が動いている」「お湯が出ている」からといって、必ずしも正常とは限りません。
部品や配管が劣化した状態で使い続けて、ガス漏れや水漏れ、火災などにつながることもあります。給湯器の修理や交換だけではすまなくなることもあるので、長く使う場合は点検を必ず受けることをおすすめします。
ガス給湯器の寿命を少しでも長くする2つのコツ
ガス給湯器は次の2つを実践するっことで長持ちさせることが可能です。
- 給湯器の掃除を定期的に行う
- 給湯器が壊れる前兆を意識する
それでは順番に詳しく解説していきます。
1、給湯器の掃除を定期的に行う
ガス給湯器の掃除で欠かせないのは次の3つです。
- 給湯器本体側の掃除
- リモコンの掃除
- 循環アダプターのフィルター掃除
給湯器本体側の掃除
給湯器本体の掃除は非常に簡単で、基本的には本体外装の汚れを濡れた布で拭いた後、水気を拭き取ります。(※汚れがひどいときは中性洗剤を使用)
さらに必要に応じて次の項目も確認しておきましょう。
- 機器周辺に可燃物はないか?
- 排気口や給気口がホコリなどで塞がっていないか?
- ドレン配管の先端が塞がれていないか?(エコジョーズのみ)
リモコンの掃除
リモコンが汚れたら柔らかい布で軽く拭き取ります。洗剤を直接吹きかけたりするのは故障の原因になるので止めましょう。
また、浴室リモコンは防水仕様ですが、むやみに水をかけると故障につながる場合があるため注意が必要です。
循環アダプターのフィルター掃除
「ふろ自動」や「追いだき」機能付きの給湯器の場合、浴槽内に循環アダプター(フィルター付)が設置されています。このアダプターを通してお湯はりや追いだきをするため、湯アカなどがフィルターに詰まっていきます。
使用頻度にもよりますが、1週間に1度を目安にフィルターを外して掃除することをおすすめします。掃除を放置すると、循環不良が生じてエラーが発生したり、お湯が適温にならなかったり、給湯器の部品に負荷が生じて故障の原因になることもあります。
衛生的にもよくないですし、給湯器の寿命を縮めることにもつながるので、掃除をサボりがちの方は注意してください。
2、給湯器が壊れる前兆を見逃さない
キッチンやシャワーのお湯が出ていても、気づかないうちに次のような症状が出ていることがあります。
- 湯温が安定しない
- 異音がする
- 異臭がする
- 水漏れしている
- 排気口にススがついている
- 本体外装に穴開きや変形がみられる
- リモコンがきかない
これらの症状が1つでもある場合、給湯器は何らかの不調を抱えている可能性が高いです。給湯器の「壊れる前兆」にいかに早く気づけるかどうかが、被害の拡大を最小限に抑えるポイントといえるでしょう。
しかし、常に給湯器の状態を確認するのは難しいと思うので、掃除のついでに確認することが一石二鳥といえるでしょう。
ガス給湯器が壊れる前兆があるなら点検や交換を検討!
給湯器、リモコン、配管など、どこか1カ所でも不具合があれば給湯器は本来の性能を発揮しなくなります。不調の度合いが軽ければお湯は出てきますが、次第に悪化してやがて動かなくなる日がやってきます。
では、どのタイミングで点検や交換をするべきなのでしょうか?
- 使用期間が10年未満の場合
- 使用期間が10年以上の場合
それぞれを詳しくみていきましょう。
使用期間が10年未満の場合
ガス給湯器は早ければ7~8年で交換されることもあります。使用頻度が高ければそれより早いことも例外ではありません。たとえ設計上の標準使用期間が10年であっても、使用頻度が高ければその分だけ消耗・劣化のスピードも速くなるからです。
現在、使用期間が10年未満であれば不調の症状がないかを確認しながら使っていただければと思いますが、すでに7~8年を超えているならば、急に壊れたときを想定して新しい機種を調べておくことをおすすめします。不調が生じていれば、点検や交換の検討も必要でしょう。
使用期間が10年以上の場合
すでに10年以上使われている場合は、一概には言い切れませんが「いつ壊れてもおかしくない」と考えておくべきでしょう。まだまだ使いたい方は「まずは点検を」、壊れたら買い替える予定の方は「早めの見積りを」しておくことをおすすめします。
特にマンション(集合住宅)にお住まいの方は、給湯器が玄関横のPS(パイプシャフト)に設置されていることも多く、戸建てよりも給湯器の存在感が薄いです。そのため、壊れて初めて給湯器の存在に気づき、戸惑ってしまう方も少なくありません。
そして、マンション用の給湯器は受注生産品も多いため、すぐに商品交換ができないことも多いので、壊れてから検討するのは非常にリスクが高いと認識しておいてください。
まとめ
以上、ガス給湯器を20~30年と長く使い続ける5つのデメリット、少しでも長く使うための2つのコツ、知っておきたい寿命の前兆についてご紹介しました。
給湯器は10年で必ず交換ということでは決してありません。しかし、メンテナンスを受けずに長期間使用することは避けた方がよいでしょう。
また、給湯器は普段は目につかない場所に設置されているため、調子が悪くてもなかなか気づかないことが多いですが、定期的な掃除をすることで給湯器の負荷を小さくし、さらには不調や異変にも気づきやすくなります。
不調の症状が軽いうちにメンテナンスを受ければ、被害も最小限で抑えることが可能となり、余計な出費を抑えることにもつながるため、掃除は今日からでも実践してみてください。
使用していた給湯器がすでに故障してしまった方も、次回使用する給湯器から、この記事で紹介している内容を生かしていただければ、寿命を長くすることにつながると思います。