ガス給湯器は「ガス・水・電気」の要素をもった設備機器であり、様々な法律や基準が関連してきます。そして設置や交換工事には、様々な国家資格や業界資格が必要となってきます。
しかし、中には無資格で工事を行う業者も少なからず存在しており、事故や災害のリスクを減らすためには、業者が適切な資格を持っていることがとても重要なポイントと言えるでしょう。
この記事をご覧になっている方の中には
「ガス給湯器の工事にはどんな資格があるのか」
「交換業者を選ぶとき、どんな資格を持っていれば安心なのか?」
「各資格があれば、どんなことができるのか?」
などが気になっている方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、ガス給湯器に関連する主な資格、それぞれの資格の特徴について詳しく解説していきます。
この記事を読むことで、給湯器の適切な工事資格を持った業者を選ぶことができ、安心して交換依頼ができるでしょう。
目次
液化石油ガス設備士
- 液化石油ガス設備士とはどんな資格?
- 試験の概要について
それでは順番に詳しく解説していきます。
液化石油ガス設備士とはどんな資格?
プロパンガス(LPガス)を使う設備(ガス給湯器やガスコンロなど)の設置・変更に係わる工事を行う場合に必要な国家資格です。
給湯器(プロパンガス)の交換を検討する場合は、液化石油ガス設備士の資格の有無を確認しておきましょう。そして工事の作業者は免状(資格証)を携帯する義務があるため、事前に確認することで安心して工事を任せることができます。
試験の概要
計3日間の専門的な講習を受け、筆記試験と技能試験に合格する必要があります。
2020年度の場合、年に4回、全国47カ所で開催されているので、受講しやすいのも特徴です。(※開催年度によって内容が異なる場合があります。)
ガス機器設置スペシャリスト(GSS)
- ガス機器設置スペシャリストとはどんな資格?
- 試験の概要について
それでは順番に詳しく解説していきます。
ガス機器設置スペシャリストとはどんな資格?
ガス給湯器やガスコンロなどのガス機器を設置・施工する場合に必要な業界資格です。ガス機器からリフォームまで幅広く精通し、資格を持っていることでお客さまから高い信頼を得られるメリットもあります。
ただし、ガス機器設置スペシャリストで全てのガス機器の設置施工ができるわけではありません。
液化石油ガスの場合は、金属フレキシブルホース等の硬質管、機器接続ガス栓を用いた接続や取り外しの場合は国家資格である「液化石油ガス設備士」が必要となります。
特定ガス消費機器(屋内設置)の場合は、国家資格である「ガス消費機器設置工事監督者」の監督のもとで工事を行う必要があります。
試験の概要
一般財団法人 日本ガス機器検査協会が開催する講習に参加し、3日間の講義・実技に参加し、筆記試験と実技試験に合格した者だけが資格を取得することが可能となります。
2020年度の新規取得講習の場合は、東京都、滋賀県のみで開催となっております。年度によっては愛知県でも行われる場合もあります。開催数は地域によって異なりますが、人気の高い資格であるため、全ての日程が早々に埋まってしまう傾向にあり、早めの申し込みが必要となります。(※開催年度によって内容が異なる場合があります。)
参考:一般財団法人 日本ガス機器検査協会 | ガス機器設置スペシャリスト (GSS)
ガス消費機器設置工事監督者
- ガス消費機器設置工事監督者とはどんな資格?
- 試験の概要について
それでは順番に詳しく解説していきます。
ガス消費機器設置工事監督者とはどんな資格?
屋内に設置するガス瞬間湯沸器やふろがまなど、工事による事故や災害のリスクが高い機器は「特定ガス消費機器」といわれており、「特定ガス消費機器の設置工事の監督に関する法律(特監法)」に定められています。
この特定ガス消費機器の設置・変更の工事をする場合に「ガス消費機器設置工事監督者」の資格が必要となります。
特定ガス消費機器の設置工事の監督に関する法律
電子政府の総合窓口e-Gov | 特定ガス消費機器の設置工事の監督に関する法律
特定ガス消費機器には次のようなものがあります。
1.ガス湯沸器(暖房兼用のものを含み、ガス消費量は合計したもの)
・ガス瞬間湯沸器(ガス消費量が12kWを超えるもの)
・ガス貯湯湯沸器、ガス常圧貯蔵湯沸器(いずれもガス消費量が7kWを超えるもの)
2.ガスふろがま
3.1および2のガス機器の排気筒及びその排気筒に接続される排気扇
国家資格である「液化石油ガス設備士」の資格を持っている場合は、監督者に該当するため、ガス消費機器設置工事監督者の資格がなくても特定ガス消費機器の設置・変更を伴う工事が可能です。
一方、業界資格であるガス機器設置スペシャリスト(GSS)の資格を持っている場合は、監督者に該当しないため、ガス消費機器設置工事監督者の資格を取得する、あるいは監督者のもとで工事を行う必要があります。
試験の概要
2日間の講習を受講して修了試験に合格すれば取得が可能となります。
2020年度の場合は、北海道、宮城県、埼玉県、東京都、神奈川県、新潟県、石川県、愛知県、大阪府、広島県、愛媛県、福岡県の12都道府県で開催されており、開催数は地域によって異なります。(※開催年度によって内容が異なる場合があります。)
参考:一般財団法人 日本ガス機器検査協会 | ガス消費機器設置工事監督者
ガス可とう管接続工事監督者
- ガス可とう管接続工事監督者とはどんな資格?
- 試験の概要について
それでは順番に詳しく解説していきます。
ガス可とう管接続工事監督者とはどんな資格?
強化ガスホース、金属可とう管を用いてガス機器とガス栓を接続する場合に必要な業界資格です。現場にて資格所持者が監督することで、資格を持たないものが工事することも可能です。
試験の概要
一般財団法人 日本ガス機器検査協会が開催する講習に参加・修了することで資格を取得することが可能となります。1日の講習を受講するだけで取得ができるため、難易度が低いのも特徴です。
2020年度の講習は、北海道、宮城県、埼玉県、東京都、神奈川県、新潟県、愛知県、大阪府、広島県、福岡県の10都道府県で開催されており、開催数は地域によって異なります。(※開催年度によって内容が異なる場合があります。)
参考:一般財団法人 日本ガス機器検査協会 | ガス可とう管接続工事監督者
簡易内管施工士
簡易内管施工士とはどんな資格?
都市ガス供給地域での主にガス栓に関わる工事(露出部分のガス栓の取替え、ガス栓の増設・移設)が可能になる業界資格です。ガス機器の移設・設置工事の際に役立ちます。
工事を行うためには、東京ガスや大阪ガスなどの都市ガスを供給するガス事業者と施工登録店契約を行う必要があります。
参考までに、プロパンガス地域の場合は「液化石油ガス設備士」の国家資格が必要となります。
試験の概要
3日間の講義・実技に参加し、修了試験に合格すれば資格を取得することが可能でとなります。
2020年度の一般講習の場合は、神奈川県、大阪府、愛知県のみで開催となっており、開催数は地域によって異なります。(※開催年度によって内容が異なる場合があります。)
参考:一般財団法人 日本ガス機器検査協会 | 簡易内管施工士
給水装置工事主任技術者
- 給水装置工事主任技術者とはどんな資格?
- 試験の概要について
それでは順番に詳しく解説していきます。
給水装置工事主任技術者とはどんな資格?
給水・給湯工事のスペシャリストであり、給水装置工事事業者が水道事業者から指定を受けるため(水道法に基づく)に必要な国家資格です。
給水・給湯配管を取り扱う場合は、工事事業者内に給水装置工事主任技術者を配置する必要があります。ただし、給水装置工事主任技術者の指導監督のもとであれば、資格を持っていなくても工事が可能です。
試験の概要
講習などはなく、試験に合格すれば資格の取得が可能となります。
2020年度の試験地区は、北海道、宮城県、東京都、千葉県、神奈川県、愛知県、大阪府、広島県、福岡県、沖縄県の10都道府県となっており、関東地区(東京都、千葉県、神奈川県)は会場指定ができないため、受験票での確認が必要となります。(※開催年度によって内容が異なる場合があります。)
参考:公益財団法人給水工事技術振興財団 | 給水装置工事主任技術者試験
第二種電気工事士
- 第二種電気工事士とはどんな資格?
- 試験の概要について
それでは順番に詳しく解説していきます。
第二種電気工事士とはどんな資格?
一般住宅や店舗などの600V以下で受電する設備の配線工事やコンセントの設置に必要な国家資格です。
給湯器の設置に関しては、コンセントの増設や電源接続工事の際に資格が必要となりますが、それらを伴わない機器交換の場合は資格を持っていなくても対応が可能です。また、リモコン線の接続作業も資格は不要となります。
試験の概要
講習などはなく、試験に合格すれば資格の取得が可能となります。
筆記試験は全国47都道府県で実施されます。
参考:一般財団法人電気技術者試験センター | 第二種電気工事士試験
TES工事士
東京ガスのガス温水システムに係わる資格になります。業界統一の資格ではありませんが、TES工事士は「東京ガス温水システムTES(セントラルヒーティング)」に関する深い知識を持っています。
東京ガスのガス供給エリアでTES熱源機(暖房機能付給湯器)の交換や床暖房の導入を検討する場合は、工事店が保有をしているかを確認しておきたい資格です。
まとめ
以上、ガス給湯器に関連する主な資格、それぞれの資格の特徴についてご紹介しました。
年々、国や業界の指導も厳しくなってきており、無資格で工事をする業者も減りつつありますが、おそらくゼロにはなっていないでしょう。
無資格者が工事をすることでガス漏れなどの事故に発展するリスクも高くなるので、給湯器の交換時には商品価格だけを見るのではなく、業者の資格の保有状況を確認することもとても重要です。
依頼者が資格を見せて欲しいと求めれば、業者は公開する義務があります。何よりも安心・安全に工事をしてもらうことが一番ですので、もしも資格の公開を拒む業者であれば依頼するのは避けるべきでしょう。